皮膚科

皮膚科について

皮膚のトラブルは動物病院を受診される多くのきっかけになっています。
皮膚の病気は決して珍しくありませんが、患者さまによって症状はさまざまです。細菌や真菌(カビの仲間)の増殖は、ほとんどの皮膚トラブルで認められる一方で、なかなか治りにくい皮膚病では、寄生虫、アレルギーやその他の免疫疾患、内分泌疾患など、皮膚トラブルの背景にある疾患まで考慮して、治療を進めていく必要があります。

当院では、症状に合わせてその時に必要な検査をおすすめし、また治療のゴールを飼い主さまと相談した上で治療を行っていきます。飼い主さまの不安を少しでも解消できるよう、皮膚病との付き合い方について、ご相談を承ります。

診療についての注意事項

皮膚病の診察をスムーズに行うためにいくつかの注意事項がございます。可能な範囲でご協力いただければ幸いです。

持参する物
  • かかりつけ病院が他にある場合は、過去の検査結果や、ワクチン接種、フィラリア・ノミ・ダニの予防の記録
  • 服用している薬やサプリメント
  • 現在与えているフードやおやつの現物またはパッケージ(難しい場合は、商品名とメーカー名をメモ書きしたものをご持参ください)
  • 普段お使いのシャンプー(商品名とメーカー名が分かるもの)
その他

可能な限り、初診予定日の1週間前からはシャンプーをお控えください。
問診では、症状の始まった時期や痒みの程度などについてお伺いいたしますので、ペットのことを理解しているご家族の方がご来院ください。

代表的な皮膚病

感染症

細菌や真菌、寄生虫などがペットの皮膚で増殖し、皮膚炎を生じることはよくあります。
代表的なものとしては、細菌性膿皮症やマラセチア性皮膚炎・ニキビダニ症・疥癬・皮膚糸状菌症などが挙げられます。
ペットから人へ、あるいはペットから他のペットへ、うつってしまう病気もありますので、濃厚接触を避けるなどの感染コントロールが必要になる場合もあります。

細菌性膿皮症

皮膚で細菌が過剰に増殖して、皮膚炎を生じている状態です。多くの場合、猫ちゃんワンちゃんの皮膚の常在菌であるブドウ球菌が原因となっています。
最も一般的に見られる皮膚病で、他の皮膚病から二次的に生じることもあります。細菌感染の生じている皮膚の深さによって、見た目や症状もさまざまです。

マラセチア性皮膚炎

マラセチアと呼ばれる真菌が過剰に増殖し、皮膚炎を生じている状態です。
マラセチアは皮膚の常在菌の一つですが、皮脂の多い環境で増えやすく、またマラセチアの増殖によってさらに皮脂の分泌が増えます。高齢になってから発症した場合は、内分泌疾患が背景にあることも珍しくありません。

疥癬

ヒゼンダニと呼ばれる皮膚に寄生するダニが原因で発症します。非常に強い痒みを生じるのが特徴で、他の動物にもうつる危険性があります。飼い主さまにも痒みが出るような場合はお伝えください。

ニキビダニ症(毛包虫症)

ニキビダニと呼ばれる皮膚に寄生するダニが過剰に増殖し、皮膚炎が生じている状態です。
ニキビダニは皮膚の常在微生物で、健康な動物の皮膚にも少数ですが存在しています。皮膚のバリア機能が低下した場合や、病気などで全身の免疫力が低下した際に発症するケースが多いです。

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌と呼ばれる真菌が、皮膚や被毛に感染することで発症します。ワンちゃんよりも猫ちゃんで多い皮膚病で、脱毛やフケが主な症状となる場合が多いです。
この症状は人に感染する可能性があり、とても注意が必要です。治療には長期期間を要するため治療をやめず、必ず検査・治療を続けていきましょう。

アレルギー性皮膚炎

人だけでなく、猫ちゃんやワンちゃんにもアレルギー(免疫の過剰反応)を原因とする皮膚病があります。日常生活の中で出会うさまざまな物質に対してアレルギーを生じる可能性がありますが、いずれの場合も、アレルギー性皮膚炎では一般的に「痒み」を伴います。強い痒みは動物のQOL(生活の質)を大きく下げるため、治療においては「今どのくらい痒がっているのか」を診察の中でしっかりと明らかにしていく必要があります。
また、痒みなど見た目でわかる症状が落ち着いた後も、アレルギーを生じやすい体質と上手く付き合っていくために、日常的なケアが必要なことも多くあります。飼い主さまと獣医師のコミュニケーションが重要になりますので、疑問や不安に思うことがあればお気軽にお話しください。
以下に、アレルギー性皮膚炎に分類される代表的な疾患を紹介します。

アトピー性皮膚炎

「アトピー素因」と呼ばれる先天的な素因を持つ動物で見られる皮膚疾患です。猫ちゃんではワンちゃん以上に詳細がわかっていないため、今のところ「猫アトピー性皮膚症候群」と呼ばれています。
アレルギーの原因物質であるアレルゲンが、皮膚や粘膜などから体内に入り込み、免疫機能が過剰に反応することで発症します。
主なアレルゲンとしては、ハウスダストやカビ、花粉などが一般的です。

食物有害反応
(食物アレルギー)

食事に含まれる物質がアレルゲンとなって生じる疾患で、皮膚症状だけでなく、下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。
アレルゲンを避けた食事療法によって症状を抑えることができるため、治療においてはご家庭での食事管理が重要です。

ノミなどの外部寄生虫
によるアレルギー

皮膚など体の外側に寄生する虫を外部寄生虫と呼びます。外部寄生虫によるアレルギー性皮膚炎としては、ノミアレルギーが有名ですが、蚊やダニ、ハジラミ等、さまざまな寄生虫によって生じる可能性があります。
寄生している虫の数が少なくても、アレルギー反応によって強い皮膚症状が見られる場合があり、検査によって虫体が見つからないケースでも、試験的に駆虫薬を使用する場合があります。

皮膚科診療の流れ

  • Step01
    問診

    これまでの経過を丁寧にお伺いします。皮膚の症状がいつ頃からはじまったか、季節によって悪化するか、痒み行動(身体を掻く・舐める等)をどの程度・どんなタイミングで見るか、食事内容やおやつの有無などです。他の病院で治療を受けていた方にはわかる範囲でその内容を教えてください。

  • Step02
    身体検査

    体重・体温測定・触診・聴診・皮膚症状のチェックなどを行います。

  • Step03
    皮膚検査

    皮膚の表面の状態を調べるため、特に感染症のチェックを目的として行います。治療の中で、繰り返し実施することもありますが、皮膚病を診断するうえでの基本的な検査ですのでご了承ください。主な検査として、以下のものが挙げられます。

    • 皮膚スタンプ検査(病変部にスライドグラスを押し当てて、付着したものを染色して顕微鏡で観察します)
    • テープストリッピング(セロハンテープで皮膚表面に付着しているものを採取して顕微鏡で観察します)
    • 皮膚スクレーピング検査(器具を使って皮膚の表面を薄く削って、採取したものを観察します)
    • 抜毛検査(毛を抜いて毛根の状態、毛の構造、真菌や寄生虫のチェックをします)
  • Addition
    細菌培養および薬剤感受性検査

    必要な場合に行います。
    近年、抗菌薬が効きにくい細菌(薬剤耐性菌)が増えています。特に長期にわたる慢性的な皮膚病では、漫然と薬剤投与を続けると、耐性菌が生じやすい環境を作ってしまいます。細菌培養および薬剤感受性検査を実施することで、効果的な抗生物質を選択することができます。
    多くの場合、病変部を専用の綿棒で拭うだけで材料の採取は完了です。それを検査センターへ提出し、1週間〜10日ほどで結果が出ます。

  • Addition
    血液検査

    必要な場合に行います。ホルモン性疾患を疑う場合やアレルギー検査の際にも採血が必要です。

  • Addition
    皮膚病理検査

    必要な場合に行います。
    局所麻酔をした上で、皮膚を小さく切り取り、それを外部の検査センターで検査します。一般的には直径6mmの円形に切り取り、1〜2針縫合します。
    特殊な皮膚病、脱毛症の原因、腫瘍の疑いがある場合などに実施します。顔などの病変では全身的に鎮静あるいは麻酔をかけて実施します。

  • Step04
    治療方針の決定

    検査結果をご説明させていただき、治療方針を相談して決定します。ご質問やご要望は遠慮なく仰ってください。皮膚そのものの状態だけでなく、ペットとご家族の負担等を鑑みて、治療の選択肢をご提示したいと考えています。

  • Step05
    再診

    治療の効果を確認します。治療開始から1~2週間後の場合が多いですが、飼い主さまのご都合も伺い、相談しながら経過を見ていきます。
    投薬により症状がおさまったと感じた場合でも、自己判断で休薬せず、獣医師に相談するようにしてください。薬によっては、急な投薬の中止が身体の負担になったり、薬剤耐性菌を生じてその後の治療を難しくする可能性があります。

ご紹介くださるかかりつけ動物病院の先生へ
  • 当院では、皮膚科症例のご紹介を受け付けております。
  • 電話・メール・FAX・飼い主さまに書面をご持参いただくかのいずれかで、貴院よりご紹介である旨をお伝えいただければ、診療後に診断・治療プランをご報告させていただきます。
  • ご紹介いただきました際の患者さまへのワクチン・フィラリア等の予防は基本的に行いません。入院を要する場合や、治療目的でノミダニの駆虫を要する場合のみ実施いたします。